サファイアオンライン寺子屋受験生から要望があった早稲田大学教育学部2024年度英語問題を解説します。今回はその最終回です。
*教育学部につきましては3つの読解問題、合計で2000語に達しました。(入試問題を入手したい方はご連絡ください)。
本ブログではあくまでもサファイア流個人の読み方を解説しています。なお、問3は大手予備校及び新聞社発表とは見解がことなりますので確認してください。
では問1から見てみましょう。
問1) . [2]段落、空欄[ α ]を埋めるのに最も適切なのはどれか
正解:c. profound
解説:段落の文脈から、人々が目撃する「lucidity(意識の回復)」は、単なるコミュニケーション能力や状況認識の回復を超えて、深い意味を持っていることが示唆されています。文章は、「old self emerging」というフレーズを使って、患者がかつての自分自身に戻るような状態になることを説明しています。したがって、「profound(深い)」という言葉がこの状態を最も適切に表現しています。
問2) . [3]段落、空欄[ β ]と[ ɤ ]に入る最も適当な語句の組み合わせを選びなさい。
正解:c. [β] disease [ɤ] abnormal
解説:この文章の中で、ジェイソン・カーラウィッシュは、認知症患者では明晰になることが予想以上によくあると述べており、それは例外的なことではなく、むしろ病気体験の一部であることを示唆しています。つまり、[β]には「病気」がよく当てはまる。さらに彼は、このような明晰化のエピソードは異常な出来事としてではなく、むしろ全体的な疾患体験の一部としてとらえるべきであると示唆しています。したがって、[ɤ]には「異常」がよく合います。
問3)下の英文を挿入する場所として、[ A ] , [ B ] ,[ C ],[ D ]のどこが最も良いですか? Nevertheless, research into this phenomenon is still in its early phases.
正解:Petersonの言葉の後の[ D ] 難
解説:この挿入文は、前の段落で導入された調査の不確実性についての議論を続けるものです。[5] 段落で、Peterson が「We don’t actually know what’s going on in the brain during the dying process that may in some way connect to these episodes」と述べており、この文は研究の未解決の側面に焦点を当てています。その後に挿入文を配置することで、その不確実性や課題がより明確に強調されます。また、Petersonの発言を補完し、研究の進展と展望についての議論を提供します。したがって、[ D ] が最も自然な挿入箇所と言えます。議論の流れが自然に続き、段落全体がより統一感のあるものになります。
問4) [l]~[5]の段落によると、次の主張のうち、終末期の明晰性の説明と一致しないものはどれか。
正解:b. Terminal lucidity occurs when neural networks that were regarded as damaged are restored.
解説:文中には、終末期の明晰性が、以前に損傷したとされていた神経回路が回復することによって発生するという明確な主張はされていません。実際、[4] 段落の引用では、「It suggests there may be neural networks that are remaining, and/or pathways and neural function, that could help potentially restore cognitive abilities to individuals we otherwise think are permanently impaired」と述べられていますが、これは回復したという明確な主張ではありません。むしろ、この文は、終末期の明晰性が脳内の一部の機能や経路が残っている可能性に関する仮説を提供しています。
問5) 段落[6]のラットを使った実験に関する記述で言及されていないのはどれか。
正解:c. A surge of organized brain activity was observed in the last few days of life.
解説:この記述は、実験に関する事実ではなく、むしろ段落[6]で触れられた内容とは関係がありません。
問6) 以下の主張のうち、段落[7]と[8]のJimo Borjiginの主張と一致しないものはどれか。
正解:a. In experiments including both humans and animals, the brain activity of the subjects decreased after a sudden drop in oxygen levels.
解説:段落[7]と[8]では、Jimo Borjiginはむしろ、脳の活動が低酸素状態の後に増加することを説明しています。
問7) 段落[8]と前の2つの段落の関係をどのように説明するのが最も適切か?
正解:d . Paragraph [8] deepens the discussion provided in the previous paragraphs.
(パラグラフ[8]は前のパラグラフで提供された議論を深めている)
解説:パラグラフ[8]は、さらなる証拠を紹介したり、トピックを詳しく説明したりすることで、前のパラグラフで提供された議論を発展させる役割を果たしている。段落[8]は、前の段落の結果を要約したり、それらの記述を批判したり、それらを支持する追加の証拠を提供したりするものではない。その代わり、議論に深みを与えている。
問8) 次の記述のうち、AWARE II 試験の記述として適切でないのは
正解:a. Several seconds before cardiac arrest, brain activity was found to disappear.
解説:段落[9]では、Parniaが述べているように、’Within 20 seconds of cardiac arrest, the brain flatlines’(心停止後20秒以内に、脳の活動が停止する)と述べられています。つまり、心停止直前には脳の活動が停止するわけではなく、実際には心停止後の20秒以内に脳の活動が停止するとされています。
問9) 段落[10] の ‘delusional’ は次のどの語に言い換えられますか?
正解:b. mistaken
解説:’delusional’ は「錯覚のある」という意味であり、その同義語としては “mistaken” が適切です。この文脈では、Parniaが調査した復活した人々が経験している状態が、錯覚ではなく、間違った理解や認識に基づくものである可能性が示唆されています。
問10) 段落[11] の ‘elusive’ に最も近い意味はどれか。
正解:b.incomplete
根拠:’elusive’ は「捕らえにくい」という意味であり、この文脈では、死に関する意識的な経験の完全な説明がまだ得られていないことを指しています。したがって、’elusive’ に最も近い意味は “incomplete”(不完全な)です。
問11) Jason Karlawish は認知症の人についてどう考えてeいますか?
正解: d. Their consciousness partly exists unchanged.
解説: 段落[3]では、Karlawish は認知症患者の意識が不可逆的に変化したと仮定する代わりに、’we should still pay close attention to their mind because some aspects are still there, though they may be quite damaged.’と述べています。つまり、認知症患者の意識は部分的には変化していない可能性があると主張しています。
問12) この記事から、著者はどのようなことが推測できますか?
正解: a. questions the idea that cognitive decline is a one-way process.
解説: 記事全体を通じて、死のプロセスに関する様々な科学的研究や知見が紹介されています。特に、終末期における明晰性や意識の活発化に関する研究は、従来の認知衰退が一方向のプロセスであるという考えを疑問視しています。このような研究結果は、認知機能の変化が複雑で一方向ではないことを示唆しています。
問13) この記事に最もふさわしい題名は?
正解: d . Why dying people often experience a burst of lucidity
根拠: 記事全体を通じて、死の間際における明晰性や意識の活発化に焦点が当てられています。これらの現象が一般的であることや、それが神経学的なメカニズムによって説明される可能性が示唆されています。そのため、「なぜ死に際の人々がしばしば明晰性の爆発を経験するのか」というテーマが記事に最も適していると言えます。
いかがだったでしょうか?問題Ⅰ, Ⅱほどではありませんが、600語余りのやや長めの医療系の文です。基本的な語彙や文法を学習したら、パラグラフリーディングにチャレンジしてください。そして読解スピードをつけましょう。パラグラフごとの関係をもとに、100語程度に要旨をまとめる習慣をつけると英語読解力が身につくはずです。
“For years, researchers have studied how individuals with dementia often regain cognitive function just before death, a phenomenon termed ‘terminal lucidity’. These experiences, commonly observed in the days preceding death, are linked to the dying process. Research into this area is in its early stages, with ongoing studies aiming to deepen our understanding of death. Investigations into brain activity at death reveal EEG changes and rapid oxygen decline associated with this lucidity, possibly indicative of survival mechanisms. These occurrences may extend to individuals with presumed cognitive impairment. Nonetheless, a comprehensive understanding of death and the dying experience remains elusive.” (131 words)
(長年にわたり、認知症の人々が死の直前に突然記憶や人格を取り戻す現象についての研究が行われてきた。この「終末期の明晰性」と呼ばれる現象は、死の直前の数日間によく見られる。これらの経験は、死への接近と関連付けられることが多い。この現象に関する研究はまだ初期段階にあり、死への理解を深めるための他の研究も行われている。死に際の脳の活動に関する研究では、脳波活動の変化や酸素供給の急激な低下が観察されており、終末期の明晰性と関連付けられている。これらの現象は、脳が酸素と栄養素を失った際の生存メカニズムの一部である可能性がある。このような経験は、認知機能が永続的に損傷していると考えられている人々にとっても起こり得る。しかし、死への理解や死に際の経験についての完全な説明はまだ得られていない。)
みなさんは「終末期の明晰性」と呼ばれる現象を知っていましたか?受験生や高校生にはあまり身近ではないかもしれませんが、このことを知っていた人は、スムーズに読み進められたかもしれません。しかし多くは、専門用語など脚注の力も借りながら読むことになります。最近の入試問題にはこの種の医療系の話題がよく取り上げられます。
医療倫理:医療における倫理的な問題や決定に関する知識を深めることができます。例えば、『医療倫理学の基礎』(原書名: “Principles of Biomedical Ethics” by Tom L. Beauchamp and James F. Childress)などが参考になります。
医療技術とイノベーション:現代の医療技術やイノベーションについて学ぶことで、医療の最新動向を把握できます。『医療技術の進化:革新と健康への影響』(原書名: “The Patient Will See You Now: The Future of Medicine Is in Your Hands” by Eric Topol)は、このテーマについて興味深い洞察を提供しています。
医療の歴史:医療の歴史を学ぶことで、現代の医療システムや慣行の起源や変遷を理解することができます。『病の文化史』(原書名: “The Social Transformation of American Medicine” by Paul Starr)などは、医療の歴史について包括的に取り上げた書籍です。
医療小説やエッセイ:医療関連の小説やエッセイは、臨床現場や医療従事者の人間性について深く考えさせられることがあります。例えば、アトゥル・ガワンデの『臨床の断片』や『死の不思議な航海』などがあります。
新聞・雑誌・ネットニュースなどの新しい医療に関する情報にはこれからも注目しておきたいものです。 《分析と文責:I-PEeceオンライン寺子屋 白拍子新》